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FAQ? 交換日記1 -小宮りさ麻吏奈



「交換日記」をはじめてみる。



きっかけは、ここ数年、自分たちを取り巻く環境が急速に変化していると感じること。

と、谷川果菜絵さんからの提案から。



「リサーチ、に関する提案第二弾


リサーチって、何を調べるのか難しい。

ZINEを作るにもまとまった文章などが必要。

いつも集まれるわけではない。

一人ではこぼれ落ちる情報がある。

肩肘を張らずにできること。

誰にでも開きたいけどある程度制限もかけたい。

=「交換日記」又の名を、シェア・ジャーナル、スワップ・ダイアリーなんちて。

300〜字くらいでも。

クィア、フェミニズムに関するアートや書籍、カルチャーにまつわる簡単なレビュー、読み解きの覚書、情報のシェア(URLの貼り付けなど)を目的に。

交換日記なので、誰かが連続するのではなく、順に書く。

交換日記なので、前の(過去の)人の話題を引き継いでもいいし、変えてもいい。

だいたい1週間ごとに回していく。

パスもOK。」




彼女とはこれまでもよく自分たちを取り巻く表現の場と、その場におけるジェンダーにまつわるトピック、日本におけるクィア・アートの歴史について、など日常的に話してきた。


とりわけ、私が関心があるトピックとしては、自身の主題であるクィア性というテーマを今の表現の場でどのように発表するべきか、また、どのような歴史にどのように接続できるのか、または日本で接続可能なクィア・アートの歴史の不在性について、など。

もちろん、日本におけるクィア・アートの作品自体がないというわけではない。

でも、それを繋ぐ流れが、他の大きな流れの中でか細く、見えにくいというのが現状のように思える。

そしてそれは、リー・エーデルマンの語ったクィア・セオリーの持つ「NO FUTURE」的な側面、未来に繋がる歴史に対しての、そのものの懐疑的性質によって歴史化を拒んできたというわけではなく、日本における美術の歴史を編む、記録する際の組織的・構造的な問題という側面が大きいのではないかという話など。


そのため、日本における「クィア・アート」の歴史に対するリサーチを、自分たちの手で少しずつでもはじめられないだろうか?ということがこの交換日記の一つの出発点となっている。

(もちろん「クィア」と定義することの暴力性やそれによって起こる分断に対しての慎重さと、その歴史観を語ることの暴力性についても常々悩んできた。でも、とりあえず「調べる」ことと「共有」することからならはじめられるのではないかと思う)



そして、もう一つの出発点は、同世代・同時代のキュレーターが、参加作家のジェンダーバランスを改善しなければ、と悩むようになったこと。


これまで私は「女性作家」というカテゴライズからの逃走をするため、とても遠回りな方法で、そして慎重に、「女性」の足跡をつけないように変形をさせながらジェンダーを取り巻く問題に対する応答やクィア性を作品の中に落とし込んできた。

本来、クィア・アートだけではなく、性についての問題を主題にする作家たちにとって、「ジェンダーによるラベリングからの逃走」が一つの重要な主題ではなかっただろうか。

性の、ジェンダーの暴力の最たるはラベリングの暴力、つまり「女性」であると括ることであるのではないか、そして、そこからどのようにして逃走するか、ということに注意を払ってきた身としては、作家であるという以前に「女性」というカテゴライズがなされた上で展覧会に参加する、という状況が作家を取り巻いていることに対して強い忌避感を抱いている。


「女性作家」というカテゴリーに加わることを容認しなければ、「ジェンダー問題について語っている作家」として認識されづらいこと、そして、作家がジェンダーバランスのために投入されるという暴力性には、私はやはり警戒を示していたい。


もちろん、投入され続けた結果、性別を理由にしなくても自然に参加作家の性別のバランスのとれた世界になることは大いに賛成ではある。

でも、そうなるために今のこの状況が必要なのだとしても、そのために「女性作家」というカテゴリーに加わることを容認しなければならないことに対し、そこに抗っている、違和感を持っている存在もいること、その声を残しておきたいと思った。


声を発することで起きる分断や自分自身へ生じるラベリングを恐れつつ、でも、ここに記録をしておくということ。

分断と炎上のSNSとはすこしはなれて、なにも言えなくなってしまう私たち、いや、少なくとも私、が少し気軽に言葉にできるための場所を作る。


そんな私のための、救済措置として交換日記を始められればと思う。


このことを、最初の投稿として自身のために書き留めておく。



小宮りさ麻吏奈 2021.4.15



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小宮りさ麻吏奈 / MARINA LISA KOMIYA

アーター・アーティスト

アトランタ生まれ、東京在住。

「人類における新しい生殖の可能性」を自身の身体を起点とした複数のメディアを通して模索している。